犬の病気リスクを減らす去勢・避妊のメリットとデメリットについて
公開日 2020.08.07 更新日 2024.11.17一度は悩む避妊・去勢の問題。病気のリスクなどを考えると、愛犬のためにも避妊・去勢手術を行ったほうが良いというのは聞いたことがあるかと思います。避妊・去勢手術を行うにあたり少なからずリスクは発生しますが、避妊・去勢をしない場合のリスクを考えると、麻酔や手術におけるリスクよりもずっと高い確率となります。
そこで今回は犬の避妊・去勢のメリット・デメリットについて解説していきたいと思います。
避妊・去勢によるデメリットはある?
愛犬に避妊や去勢を行うと、将来的に子供を作ることができなくなるため、少し抵抗感があるという方も少なくありません。また、手術を行うと肥満体質になってしまうという話も聞いたことがあるでしょう。
避妊・去勢における犬へのデメリットは、子供を持てなくなるということ、手術に関わるリスクがあること、肥満体質になってしまうこと、残りは倫理的な問題かと思います。
しかし、愛犬の子供を作る予定が今後なければ、病気のリスクを大幅に減らすこともできるため、意を決して避妊・去勢を検討してみても良いかもしれません。
避妊手術によるデメリットとは?
避妊・去勢を行うデメリットとして挙げられる、肥満体質になってしまうという問題ですが、これは手術を行った後にホルモンバランスが変わり、体の代謝エネルギーに変化が生じることで起きる問題です。
メス犬の場合、子宮や卵巣を健康に維持するため通常は30%程度のエネルギーが使われています。しかし、避妊手術を行うことで3割程度を割いていたエネルギーの行き先がなくなり、避妊後はどうしても太りやすくなるわけです。
この問題は運動量を増やすことや、与えるドッグフードのカロリーを減らすなどの対策を行うことで、特に問題なくデメリットを克服することができます。
デメリットを理解していけば、避妊・去勢を行うメリットの多さも理解しやすいかと思いますので、まずは手術におけるリスクの割合と、病気を発症する割合について理解を深めていくことが大切です。
避妊・去勢手術のメリットを数値で確認
避妊・去勢を行うデメリットとして、一番に挙げられるのが手術に関わる麻酔のリスクです。
麻酔は人間の手術でも使用されていますが、犬も同様に100%安全というわけではありません。避妊・去勢手術に関わらず手術を行う際には麻酔が使用されますが、麻酔による手術の関連死は0.1%~0.3%という数値データがあります。
麻酔を利用する際は事前に血液検査を行い、肝臓数値などを確認したうえ、万全の健康状態で手術に望みます。しかし、残念ながらアレルギーによる要因は事前に把握することができないため、100%の安全を確保できるものではありません。
とはいえ数値からもわかる通り、アレルギー等の要因による麻酔の関連死は非常に稀であるということがわかるかと思います。
未去勢・未避妊の病気リスクはもっと高い割合
続いて去勢・避妊を行っていない犬の、特定の病気を発症する割合を比較してみましょう。
避妊していないメス犬に多く見られる病気が「子宮蓄膿症」です。未避妊の場合の子宮蓄膿症の発症割合は、約15%~と高い数値となっており、中でも10歳前後の高齢犬による発症が多いというデータもあります。
未去勢のオス犬に関しては「精巣腫瘍」の発症割合が、去勢済みのオス犬より10倍も高いというデータがあります。
高齢になる前に対策を
麻酔に関連する手術の関連死が1%に満たない割合なのに対し、未避妊・未去勢の犬が避妊・去勢に関連した病気を発症する割合は、10倍以上の割合になるということがデータからもわかるかと思います。
比較として挙げた病気はどちらも命に関わる重大なものですが、避妊・去勢手術を行うことで未然に防ぐことのできる病気です。しかし、犬の健康状態や年齢によっては手術のリスクも高くなりますので、手術が行えないという場合もあります。
年齢的に遅くなる前に早めに決断した方が、愛犬にとっても飼い主さんにとっても安心できるでしょう。
オス犬を去勢するメリットについて
オスの去勢手術では精巣を摘出する手術が行われます。去勢手術を行うことで、病気を予防できるほか、性格的な部分にもメリットが得られるようになります。
オスの去勢は生後6ヶ月~1年の間が理想的なタイミングとなりますが、これはオスの初めての発情が生後6ヶ月以降に始まるためです。
性格的な部分もあるため、問題行動が必ず抑えられるとは言い切れませんが、体や心が成熟する前に去勢することで発情行動を抑制し、発情によって引き起こされる問題行動を抑制させることができるわけです。
去勢手術を行う事で予防できる病気
主にオスの去勢手術を行うことで予防できるオス特有の病気には、先ほど紹介した精巣腫瘍や「前立腺肥大」が挙げられます。
前立腺肥大については6歳以降の未去勢のオス犬に発症する割合が高く、自然な排尿が行えなくなることから前立腺肥大が要因となり、命を脅かす病気を発症する可能性もあります。
また、精巣腫瘍は未去勢のオス犬の2番目に多いと言われる病気ですが、去勢を行うことで予防ができます。ただし、悪性腫瘍であった場合には予防の効果が得られないため、やはり早めの手術がおすすめとなります。
メス犬を避妊するメリットについて
メスの避妊手術では、メスの卵巣を摘出、もしくは卵巣と子宮の両方を摘出する手術を行います。手術としては卵巣のみを摘出する方が、手術時間の短縮や傷口も小さくなりますので、それだけリスクは少ないということが言えます。
卵巣だけを摘出しても、子宮蓄膿症を予防することはできないのでは?と思われますが、子宮蓄膿症の原因とされているホルモンは、卵巣を摘出することで発生することはないと考えられています。
これは獣医師の判断もよるところですが、手術時間や傷の大きさ、手術費用等によっては卵巣のみ摘出する場合もありますので、事前によく説明を聞いておくようにしましょう。
発情前に避妊することでメリットも高くなる
メスの避妊の場合、生後6ヶ月~10ヶ月が避妊手術に理想的なタイミングとなります。オスと同様に、メスも発情がこの期間に初めて訪れることに関係しています。
初めての発情前に避妊手術を行えば、メスの腫瘍で最も多い「乳腺腫瘍」に罹患する確率は0.05%という低い数値に抑えられることがわかっています。
しかし、1回目の発情後は約7%、2回目の発情後は約25%と、発情の回数を重ねるごとに割合は上っていってしまい、24ヶ月を超えて避妊手術を行っても、乳腺腫瘍に対しての予防効果は期待のできないものになってしまいます。
また逆に、生後6ヶ月前に避妊手術を行うのはどうか?と考えてしまいますが、今度は月齢的に手術自体のリスクが高くなるため、ある程度まで成長している生後6ヶ月以降が理想的なタイミングとなるのです。
まとめ
避妊・去勢のメリット・デメリットについて解説してきました。もちろん、すべての病気を避妊・去勢によって回避できるわけではありませんが、病気の予防策としては十分な効果を得られます。
オスもメスも、若年の頃には病気の心配もさほどありませんが、高齢になるにつれて病気が出てきます。そうなってしまった場合、手術によるリスクが高くなるために満足の行く治療を受けることができない場合もあるでしょう。
冒頭でも解説したとおり、将来的に子供を作る予定がなければ、病気のリスクを減らすために避妊・去勢を行うことをおすすめします。また、1歳までには行っておきたいので、できるだけ早めに検討するようにしましょう。